AppStoreリジェクトランキング 2016年2月版

AppStoreのアプリ審査リジェクト理由ランキング、2016年2月版が出ています。

Top 10 reasons for app rejections during the 7‑day period ending February 3, 2015.
https://developer.apple.com/app-store/review/rejections/

これ、「Feburary 3, 2015」って書いてあるけど、たぶん2016です。前回が2015年9月なので。年が変った直後ってやらかしますよね。長谷川もやらかしました。

例によって前回2015年9月版と比較して見てみましょう。

前回の記事はこちらです。
「AppStoreリジェクトランキング 2015年9月版」

順位の行のカッコ内は前回9月版からの順位の変化です。

10位 バックグラウンドでの動作は特定の用途にのみ使用可能 (NEW)

3% Guideline 2.16: Multitasking Apps may only use background services for their intended purposes: VoIP, audio playback, location, task completion, local notifications, etc.

ガイドライン 2.16: マルチタスクで動作するアプリのバックグラウンドでの動作はVoIP, 音楽再生, 位置情報, タスクの完了, ローカル通知などにのみ使用可能。

いきなり新顔ですね。
iOSアプリは特定の条件下でバックグラウンド動作することができますが、その用途はソフトウェア的にも、ガイドライン的にも限定されています。これはモバイルデバイスでの動作という性質上、バッテリ消費に対する要求の優先度が高いためと思われます。

長谷川はこのリジェクトをもらったことがないのですが、例えば「アプリをサイレントPUSHで起こして重い処理を走らせてホカホカカイロ」みたいなことをやるとこのリジェクトをもらうことになるでしょう。

…でもトップ10に出てくるぐらいだからもっとメジャーな利用がされているんでしょうね。何だろう。

9位 AppStoreのアプリ名が不適切 (↓-3)

3% Guideline 3.4: App names in iTunes Connect and as displayed on a device should be similar, so as not to cause confusion

ガイドライン 3.4: iTunes Connectのアプリ名とiOS上で表示されるアプリ名は混乱を起こさない様に似た名前になっている必要がある。

毎度おなじみ、ですね。
ガイドラインからはわかりにくいのですが、AppStoreで良く見る、キーワード列挙した様な名前に対するリジェクトです。

「アプリ名 ~ 売り文句売り文句売り文句売り文句キーワードキーワード」の様に。

この項目でリジェクトされる場合、コメントで「AppStoreのタイトルにキーワードを入れない様にね。」と添えられるはずです。

8位 不適切なレーティング (↑+2)

3% Guideline 3.8: Developers are responsible for assigning appropriate ratings to their Apps. Inappropriate ratings may be changed/deleted by Apple

ガイドライン 3.8: デベロッパはアプリのレーティングを適切に設定する必要がある。不適切なレーティングはアップルが修正することがある。

アプリのレーティングが適切に設定されていない場合のリジェクトです。すっかり常連。

注意すべきはお酒とエロ。特にエロです。

長谷川はそれぞれの項目について「有無については大きめに(=ちょっとでもあれば「あり」)」「程度(まれ/軽度, 頻繁/頻度)は少なめに」ぐらいの方針で申告しています。

また、個別の項目だけでなく、レーティングの設定の結果算出される年齢について言及されることもあります。この場合、「このアプリの内容だと17+なので17+になる様に設定しなさい」的な指摘になります。この場合は、「有無」「頻度」を調整して、指摘された年齢表示になる様にしましょう。

7位 他のプラットフォームへの言及 (↑+1)

4% Guideline 3.1: Apps or metadata that mentions the name of any other mobile platform will be rejected

ガイドライン3.1: アプリやメタデータ(タイトルや説明文など)で他のモバイルプラットフォーム名に言及するアプリはリジェクト。

本来的にはおそらく「Android版の方が安いです」みたいな文言を入れないでね、というガイドラインだと思うのですが、その適用範囲は意外と広く、iTunes Connectの説明文だけでなく、アプリ内の「お知らせ」などの動的コンテンツなどにも適用されます。

実際、アプリ内の「お知らせ」欄に「Android版リニューアルしました!」と書いてあった、ということでこのリジェクトをもらう例があります。

つまり、このガイドラインは開発者だけでなく、運用チームにもこのルールは共有しておく必要がありますので、エンジニアの皆さんからチームやお客さまに情報提供してあげてください。

6位 不当に個人情報を集める (↑+3)

4% Guideline 17.2: Apps that require users to share personal information, such as email address and date of birth, in order to function will be rejected

ガイドライン 17.2: 機能を利用させる条件としてユーザにEメールアドレスや誕生日などの個人情報を入力させるアプリはリジェクト。

このリジェクトは、個人情報関連なのですが、単に会員登録の中に個人情報があってはいけない、という訳ではありません。その情報取得に必然性があるかどうか、というところが論点になります。

このリジェクトではレビュアからのメッセージの中に to access non-account-based features というセンテンスが含まれていることがあります。

長谷川は non-account-based features(= アカウントベースでない機能)でユーザ情報を取る場合は注意が必要、と思っています。逆に、ユーザ登録をしてから使ってもらう、外で(Webとかで)ユーザ登録してから使って貰う様な場合はあまり気にしないで良いと思っています。

このリジェクトをもらった場合は、レビュアに丁寧に説明することで理解してもらえるケースもあります。
リジェクトされたからといってすぐに機能改修やサービスの変更をするのではなく、まずレビュアに質問や追加の説明をするのもお勧めです。レビュアはパッと見で判断していると思いますが、質問や説明はしっかり読んでくれています。

5位 アプリ説明とアプリ実装の不一致 (↓-1)

4% Guideline 3.3: Apps with names, descriptions, screenshots, or previews not relevant to the content and functionality of the App will be rejected

ガイドライン 3.3: アプリの名前、説明文、スクリーンショット、プレビューがアプリの内容や機能と一致していないアプリはリジェクト。

説明と実際のアプリの内容の不一致によるリジェクトです。「説明文に書いてあるのに実装されていない」、「説明文に無いのに実装されている」の両方で適用されます。つまり、AppStoreで公開するアプリに「隠し機能」は許されていません。

本来的には「懐中電灯アプリって書いてあるけど実はテザリング機能のあるアプリ」みたいなアプリに対する条項と思われます。

とは言いつつ「アプリの説明には”世界の〜を検索できます”と書いてあるのに日本のしか無いじゃない。」というリジェクトも見たことがありますので油断してはいけません。

4位 虚偽、欺し、誤解を招く (↑+3)

5% Guideline 22.2: Apps that contain false, fraudulent or misleading representations or use names or icons similar to other Apps will be rejected

ガイドライン 22.2: 虚偽、人を欺す、誤解を招く表現を含むアプリ、他のアプリと似た名前やアイコンを持つアプリはリジェクトされる。

ガイドライン文章どおりの内容なのですが、何らかのコンテンツに関連するアプリを作った時にそのコンテンツの名前をアプリ名に含めるとこの条項でリジェクトされます。この場合、「たとえばこういう名前にしなさいよ」というサジェストがもらえます。

世の中に「なんたら for ○○」とか「なんたら ○○ edition」というアプリが多いのはこういうこと言われているからです。そう言われたら従ってしまうので、もうちょっと日本語として自然なサジェストを貰えると嬉しいのですけどね。

3位 イケてない (→±0)

6% Guideline 10.6: Apple and our customers place a high value on simple, refined, creative, well thought through interfaces. They take more work but are worth it. Apple sets a high bar. If your user interface is complex or less than very good, it may be rejected

ガイドライン 10.6: アップルとそのカスタマーはシンプルで洗練され、創造性に富んだよく考えられたインタフェイスを高く評価する。これには多くの仕事が必要だがその価値はある。アップルの基準は高い。もしアプリのユーザインタフェイスが複雑だったり、最良でない場合、リジェクトされることがある。

定番オブ定番。不動の3位。

アップルから見て「イケてないよね」というアプリに下されるリジェクトです。(大抵そういうアプリはアップル以外の第三者から見ても「イケてない」と思いますが。)

第一印象が非常に重要なのはアプリのレビューも一緒でして、一度もらってしまうとそこからの挽回は大変難しいです。なので「とりあえずこれで出そう」と言う時にも、すぐに気付く懸念点があれば解消してから出した方が後悔しなくて済むでしょう。

「起動するとすぐWebViewになってほぼ全ての画面がWebベースになっている」みたいな、いわゆるガワアプリ(皮アプリ)は10.6でリジェクトされます。この場合「このアプリはブラウザと同じだよね。Safariでやりな。」というメッセージが付いてきます。ガワアプリであってもネイティブ部分を作りましょう。

一発ネタ、みたいなアプリも10.6との戦いになる様です。

2位 バグがある (→±0)

9% Guideline 2.2: Apps that exhibit bugs will be rejected

ガイドライン 2.2: バグのあるアプリはリジェクトされる。

アプリにバグがある場合です。シンプル。

前回も書きましたが、どうもレビュアーはiPhone向けのアプリでもiPadを使って審査している様です。長谷川もiPadでiPhoneアプリを拡大表示した場合の不備について指摘されたことが複数回あります。これは、「画像の表示位置がちょっとずれて画像上部が切れてる」みたいな指摘までされます。

Guideline 2.10 iPhone Apps must also run on iPad without modification, at iPhone resolution, and at 2X iPhone 3GS resolution

ガイドライン 2.10: iPhoneアプリはそのままiPad上の等倍表示、拡大表示でも動作しなければならない。

その他、iPhone用アプリのiPadでの動作については皆さんよく指摘されている様で、必ず一度は見た方が良いですね。

1位 もっと情報が必要 (→±0)

14% More information needed

もっと情報が必要

不動の一位。たぶんずっと一位なんでしょうね。

レビュアーがレビューをする際に、どう見て良いかわからない場合の定型句です。会員制のアプリで起動するとすぐにログインID・パスワード入力画面になり、新規登録が出来ない様な場合です。

アプリが特定のハードウェアを前提としている様な場合にもおそらくこれで返されると思います。この場合、そのハードウェアとアプリを使っている動画を撮影し、YouTubeのURLなどを伝えることで審査を進めることも可能です。

ただ、最終的にハードウェアを郵送することになるケースもある様なので、できるだけ分かりやすい様に説明文や動画を作るのが良いでしょうね。

上記でも書いていますが、レビュアは丁寧に説明すればきちんと読んでくれます。ただし、諦めは早いです。過剰と思うぐらいに説明をしましょう。


いかがですか。前回、前々回にも登場した「常連」ばかりですね。

でも、実は1つ大きな変化がありました。

2015年4月, 2015年6月, 2015年9月では上位にいた、ガイドライン 2.1が無くなっています。

Guideline 2.1: Apps that crash will be rejected

ガイドライン 2.1: 落ちるアプリはリジェクトされる

このガイドライン2.1は過去3回、すべて全体に占める割合が3%でした。

ガイドライン2.2が「バグのあるアプリはリジェクトされる。」ということで、これに統合されたのかな?と思ったのですが、ガイドライン2.2も過去3回の11%, 10%, 12%に対して、今回は9%。増えていないどころか減っている。

9% Guideline 2.2: Apps that exhibit bugs will be rejected

ガイドライン 2.2: バグのあるアプリはリジェクトされる。

仮説として…「年末年始に審査に持ち込まれるアプリの数が増えて、1つあたりの審査時間が減少、バグがあったり、落ちたりするまで見なかった」とか「クリスマスで特別モードに改修、年始で戻す様に、審査の数が増えた割に、改修の規模が小さいのでバグがあったり落ちたりするアプリが少なかった」というところでしょうか。

次回も要注目ですね。