この本、前のBlogでレビュー記事を上げていたのだけど相変わらずバイブルなので再掲載します。
「ミルクカフェ」の古川健介氏や「みんなの就活日記」の伊藤将雄氏など、コミュニティサイトを構築・運営した実績のある著者8名が各自の経験をもとにコミュニティサイトの作り方、運営方法などのノウハウについて記述しています。
1998年頃、Perlで日記システム(今で言うBlogですね。Web日記に対してコメントが付けられるページって当時はあまりメジャーじゃなかったのです。)を作って以来、ユーザ間コミュニケーションのシステム/サイトをいくつか作っています。
10年ほど前に、とある大型オンラインゲームに大ハマりし、ユーザ投稿型データベースサイトを作りました。
このサイトは当時の環境の後押しもあって月間500万PVほどに育ちました。
このサイトを作り、運営していく中で「コミュニティサイトは楽しい」と意識し、それ以来「コミュニティサイト(CGM)が自分のライフワークの1つ」と認識しています。
そんな訳でこの本はタイトルと著者陣を見て興味が沸き購入しました。
内容の方は、
- 長谷川も前述のサイトの運営の中で感じていたこと
- 長谷川がうまくいかなかったことの解決方法
- 長谷川が全く考えていなかった視点での考え方
と、「さすが経験者」と納得のいく内容でした。
目次的には以下の感じです。
chapter 1. スタートから成功までの目標とプロセス
コミュニティサイトの企画から開発、オープン前の準備、そして軌道に乗せるまでに考えるべきこと、注意すべきことが書かれています。
この章に書かれていることの半分ぐらいは長谷川も今までの経験から「そうすべきだ」と思っていたことで、自分の考えと同じ考えを持つ人がいるということに少し安心しました。
chapter 2. リスクマネジメントの必須項目
コミュニティサイトを運営していく上で、ユーザの書き込みなどの行動によってどの様なリスクがあるか、そのリスクを小さくするためには何をする必要があるかが書かれています。(キーワードとしては「誹謗・中傷」「スパム・宣伝」「炎上」「荒らし」というところですね。)
コミュニティサイトを運営していると多かれ少なかれこういった問題に頭を悩ませることがあるのですが、自分が、自分の経験から「こうする」と思っていたのとはまた違った切り口での予防法、解決法があって、参考になりました。
chapter 3. ユーザーモチベーションを高める運営術
章タイトルよりももう少し広めにコミュニティサイトについて書かれています。
・コミュニティサイトを運営していく上で「管理人」が何をすべきか、どの様な心構えでいるべきか、「管理人」に必要なものは何か。
・サイトがオープンしてからの期間によって具体的にサイトに何が起こり運営者は何をする必要があるのか。(状態を誕生期、幼少期、思春期、青年期の段階に分類して解説されています。)
・コミュニティサイトのユーザが何を「おもしろい」と思いサイトに訪れるか
改めて見てみると、上記の「ユーザ投稿型データベースサイト」は(偶然も含めて)ここに書かれた様なポイントのいくつかをパスしていました。
chapter 4. Webコミュニティにおける収益モデルの考え方
コミュニティサイトの収益モデルを5つのパターンに分類しての解説、広告を出稿する際の指標(CPM, CPC, CPA)の解説、ネット広告の行く末について書かれています。
この筆者の方もここに著者として名前を並べる以上すごい方なんだろうなーと思いつつ、本のテーマと章のテーマ、筆者の方の得意分野がいまいちマッチしていない感じがありました。
1~3章と比べると具体性が低く迫力に欠ける感じでした。
復習で読み直す時は、この章は飛ばしています。
(今後、資料として見返すことはあると思いますが。)
chapter 5. ECと集合知の融合 ~ソーシャルコマースの潮流
章題の通り、ECサイトと集合知をどうマッチさせるかというテーマの章で、一般的な「商品レビュー」「クロスセル/強調フィルタリングによるリコメンド」などの手法の解説に始まり、ECサイトならではの課題(ネガティブなレビューの取り扱い、レビューを集めるためのユーザインセンティブなど)にも触れています。
後半ではニッセンのEC + コミュニティサイトである「ハピテラ」を例に、運用体制、運営方針を紹介しています。
この章はEC + コミュニティサイトの場合に考える必要のある事項が体系立って整理されており、大変参考になりました。
自分でECサイトの企画をしたり提案をする際には読んでおくと考えを整理出来て良いと思います。
chapter 6. モバイルコミュニティの可能性
ケータイ用コミュニティサイトについて、その特徴、PCとの違い、注意点などを解説しています。
章の後半ではSNS、プロフなど分類ごとにいくつかのケータイ用サイトを例に挙げて前半であげられたケータイサイトならではの特徴について説明しています。
ケータイサイトについてコンパクトにまとめられていて読みごたえありです。特にケータイサイト独自の収益モデル、集客方法の分類は必見です。
2012年8月追記: 近年もっとも注目すべき対象がスマホにシフトしているのでやや色あせて見えますね。
chapter 7. コミュニティビジネスの未来
今後のコミュニティビジネスの変化を「3W1H」(What / When / Where / How)のテーマを軸に予想・解説しています。
なのですが、この本、2008年1月刊行な訳で、ドッグイヤーなネットの感覚だと2010年1月現在、すでに「やや古いなー」という印象になってしまっています。
でも、逆に言うとこれ以外の章は2年たった今でも十分現実に即している(様に感じる)訳で、なかなかすごい本ですね。
コミュニティサイトに興味がある方、趣味や仕事で運営している方、そんな方々に自信を持ってオススメできます。