イベントレポート「エンタープライズCMSをオープンソースCMSに置き換えれるか?!ここまで進化したオープンソースCMS Drupal」

「エンタープライズCMSをオープンソースCMSに置き換えれるか?!ここまで進化したオープンソースCMS Drupal」というイベントに参加したので簡単にレポートです。

Drupalは、PHPベースのオープンソースCMSで、長谷川の所属するデジタルサーカス(株)では2008年からカスタマイズ開発をはじめ、ここ数年特に力を入れて普及のための活動をしています。

このイベントはそんなDrupalをエンタープライズ分野でどれだけ使っていけるか、というテーマをメインに3名の発表者が登壇しました。

企業サイト設計にユーザーインサイトを取り込む

株式会社大伸社コミュニケーションデザイン代表取締役 上平 泰輔さんの発表。

  • 老舗のB2Bメーカのブランド再構築の話。
  • 中国、韓国メーカが競合。ブランド力があるつもりだったが、実際に社内、社外にヒアリングをしてみたら実はまずい状況だということがわかった。
  • その状況故、皆が本気になったのでプロジェクトは進めやすかった。
  • 社外へのヒアリングでは彼らの顧客に電話をして聞いてみた。
  • ヒアリングは心象イメージ法という方法を使用した。これは多量の写真を見せてどれが会社のイメージに合うか、と聞く方法。
  • かなりの写真の中から選択してもらうが、かなり同じ画像が抽出される。
  • これらをもとにあるべきブランドのイメージとそれを実現するための具体的な施策を作成した。
  • ブランド再構築の結果Webも再構築されるが、そのCMS選択をこれからする。
  • 特に海外で納得感のある選択が必要。オープンソースCMSは海外では非常に盛り上がっている。

エンタープライズCMSでできること、オープンソースCMSでできないこと

財団法人 日本総合研究所 特命研究員 田中 猪夫さんの発表。

これこれを押さえておけばオープンソースCMSをエンタープライズで使えるよ、という紹介。

実装技術の側面

  • HTMLをあらかじめ生成しておく(静的配信)Movable Typeなどに対して、DrupalはHTMLを動的に構築する。そのためキャッシュ制御が重要。
  • パーソナライズはどこまで可能か。パーソナライズはシステムが「重く」なる要因。
  • PIM(Product Information Management)としての機能。「ページ」より細かい単位(製品 = Proeuct)で情報を管理する。更に細かい情報であるDAM(Digital Asset Management)への発展も。Digital Assetは解像度の異なる製品写真など。
  • 多言語化。Web表示側の多言語化だけでなく、管理画面側の多言語化も重要。エンタープライズでは編集者が同じ言語を使用するとは限らない。
  • ロール管理。数百人のオペレータがいるシステムに対応できるか。Drupalは柔軟なロール管理が可能。
  • 翻訳メモリーとの連携。プロダクト情報をCMSとして管理する場合、新製品が出てもその全てを翻訳しなおす必要は無い。マスター言語で差分抽出し、差分のみ翻訳する。Drupalは翻訳メモリーと連携可能。

チームワークの側面

  • デザイン、Drupalチーム、PMをどの様なチームとするか。
  • デザイン 外注、Drupalチーム 外注、PM 内製など、組み合わせ多数。

運用ノウハウの側面

  • コンテンツ管理をどうとらえるか。
  • 実際に運用を開始してみると外国の人たちがうまくいっていないと言う。
  • これはCMSを導入する目的の違いに起因することがほとんど。本社はガバナンスのためにCMSを導入したい。一方、営業所や現地のスタッフはマーケティングのためにCMSを利用したい。この目的が衝突する。
  • 設計、運用をその目的ごとにしぼってやらないとエンタープライズCMSはだめ。
  • ビジネスの側面

  • 「Drupalの機能はエンタープライズCMSに匹敵する。」
  • J&J(ジョンソン&ジョンソン)は3,000サイトでDrupalを採用している。
  • エンタープライズCMSの大規模採用理由は1つ。Webサービスの社内共通言語として採用する。
  • つまり、フレームワーク、設計の共有。
  • フォードでは車両1台1台に付いているVINナンバー(Vehicle Identify Number)で部品の生産工場までトレースできる。これには15の基幹システムとWebが連携した。こんな連携を設計する場合にCMSが違ったらたいへん。

結論

Enterprise で CMS を入れる場合、現在・未来の多様なビジネスコネクトが重要

Drupalによる大規模サイトの設計・実装において何に気をつけるべきか

弊社 団長 田口 健の発表。

Drupal紹介

  • Drupal。PHPで書かれたオープンソースCMS。フレームワークとしての側面を持っている。
  • 海外では大きなシェアを持つ。
  • CMS全体の72%をWordPress, Drupal, Joomla!が占める。
  • DrupalはオープンソースCMSでありながら、ハイエンド商用CMSと競合する。
  • 海外での導入事例: ホワイトハウス、オーストラリア政府、フランス政府、エコノミスト、ワシントンポスト、ワーナー・ブラザーズ、ジョンソン & ジョンソン、メルセデス・ベンツ、ダノン…
  • 国内での導入事例: 毎日新聞、H.I.S.、ほけんの窓口、リクルート、ポニーキャニオン、マイナビ、光通信、青山学院大学、バニラエア、日立 …
  • 大規模サイト導入のポイント

  • 機能/モジュール選定: 3万本以上のモジュールがあるが、定番モジュールは決まっている。モジュールの集合としての「ディストリビューション」もある。ECサイト用、就職・転職サイト用、ニュースサイト用、政府・公共機関用、教育機関用、ホテルサイト用 等々。デジタルサーカスでも日本語サイト用ディストリビューション開発。
  • インフラ設計: LAMP環境を推奨。現在はDrupal 7を利用するのが良い。2015年にDrupal 8がリリースされるが周辺モジュールの対応には少し時間がかかるだろう。
  • データ設計/データ移行設計: データを「コンテンツ」「エンティティ」「タクソノミ-」を使って表現する。表現しきれない場合は「カスタムテーブル」を使う。データ移行用のモジュールも多く存在する。静的コンテンツの大量移行は非常に大変。HTMLタグ入りやスマホ対応は特に大変。
  • セキュリティ: セキュリティ要求の高いサイトでの導入実績あり。セキュリティ検査も問題無く通過する。Drupalコミュニティに専門のセキュリティチームが存在。デジタルサーカスではDrupalナビにてセキュリティアップデート情報を日本語で配信中。
  • SEO: コンテンツが構造化されておりSEO的に有利。SEOのための機能・モジュールも豊富。
  • パフォーマンスチューニング: Weather.comにDrupal導入。10億UU/月。DBやメモリへのキャッシュ、キャッシュサーバ、CDNの利用によるチューニング。
  • 保守運用: サイト運用のための機能、ユーザ・ロール管理、ワークフロー管理など豊富に存在。セキュリティ深刻度付きのアップデート。(Not Critical~Highly Critical)

まとめとして、DrupalはエンタープライズCMSとして十分なポテンシャルを持っている。


と言う訳で、いつも参加する様な技術者オリエンテッドな発表でなくて面白かったです。
このBlogもDrupalにしたいしたいと思いつつ面倒でしてない長谷川がイベント名の「ら」抜きを気にしつつお送りしました。

現地からは以上です。